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最高裁判所第二小法廷 昭和44年(オ)1224号 判決 1971年12月17日

主文

理由

上告代理人坂田幸太郎、同日佐戸輝一、同五十嵐太仲の上告理由一について。

原審の確定した事実関係のもとにおいては、訴外株式会社共誠医科器械製作所(以下共誠という。)の被上告人株式会社平和相互銀行に対する積立預金を所論の内入弁済に充当することによつて、本件代物弁済予約上の権利が当然に放棄または失効によつて消滅したと解すべき理由はない旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法は認められず、論旨は採用することができない。

同二1について。

本件土地外一筆の時価が、本件代物弁済予約当時金四一六万三〇〇〇円であり、予約完結当時金五七七万円余である旨の原審の認定は、挙示の証拠関係に照らして是認することができる。論旨は、ひつきよう、原審の認定しない事実に基づいて、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するにすぎず、採用することができない。

同二2について。

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告人谷口インキ製造株式会社が、本件土地外一筆の所有権を取得するにあたつての出捐は、一種の清算処分として行なわれたとみることができる旨の原審の判断は肯認するに足りる。それゆえ、上告人の、弁済供託により共誠が本件訴求の各登記の抹消を求める権利を取得した旨の主張を排斥した原審の判断もまた正当として是認することができる。論旨は、原審の認定に反する事実ないしは認定しない事実の存在することを前提として右判断の違法をいうものであつて、採用することができない。

(裁判長裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄)

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